【老子】韜光第七
天長地久。天地所以能長且久者,以其不自生。故能長生。是以聖人,後其身而身先,外其身而身存。非以其無私耶。故能成其私。
天は長く地は久し。天地の能く長く且つ久しき所以の者は、其の自ら生きざるを以てなり。故に能く長生す。是を以て聖人は、其の身を後にして身先んじ、其の身を外にして身存す。其の私無きを以てに非ずや。故に能く其の私を成す。
天は永遠であり、地は悠久であります。天地が(尽きることがなく)永遠かつ悠久であるわけは、自ら(新しく何かを)起こそうとはしないからです。だから、長くあり続けることができるのです。 このようなわけで聖人は、(他者を先に立てて)自分の身を後回しにするが、(周囲に慕われて、結果的に)自分の身が先に立つようになります。(他者に尽くすために)自分の身を度外視するが、(周囲から大切にされて、結果的に)自分の身が残るようになります。 (これは、聖人が)<無私>であることに基づいているのではありませんか? だから、(聖人は)自己を築き上げることができるのです。
「天長地久。」
天長地久[てんちょうちきゅう]
天地の存在は永遠であること。天地が永久であるように、物事がいつまでも続くこと。
天皇陛下のお誕生日の旧称を天長節、皇后陛下のお誕生日を地久節と呼んでおりましたが、『老子』の「天長地久。」の一文が由来のようです。老子の子孫を自称する唐王朝の帝室である李氏の中でも特に老子に傾倒していた玄宗が、誕辰[たんしん;お誕生日]を天長節と呼んだのが始まりとのことでした。日本では、775年9月に光仁天皇が10月13日の誕辰の日を天長節と称して祝われたのが起源です。
「非以其無私耶。」
<無私>については以下のような記述がある。
耶
もとは邪と書き、「邑+音符'牙[ガ]'」。邑は「口(領地)+人の屈服したさま」で、人民の服従するその領地を表す。中にふさぎ込めるの意を含む。のち阝[おおざと]の形となり、町や村、または場所を表すのに用いる。
1. …であるか。(疑問の意を示す)
2. A耶B耶/ Aか、Bか。(選択の疑問の意を示す)
3. どうして…であろうか。(反語の意を示す)
4. なんと~か。(感嘆の意を示す)
(2017/08/15 執筆記事 転記)